国際税務の窓

国際課税への対応

経済の進展と環境変化で海外子会社設立は多くの企業にとって当然の選択となりそれから数十年、日本経済は今新たな経営方針の選択をせまられる時でもあります。
法人税法も海外子会社からの配当を課税対象から95%除くなど、グループ法人間の取り扱いも大きな改正が行われました。
また中国に子会社を有する日本中小企業も少なくない現在予想される経済変化に柔軟に対応する対処能力も必要とされています。
中国税務当局の移転価格税制の執行は、直面すべき問題の第一課題といえます。
巨大会計事務所の国際コンサルタントを依頼する段階ではなく、さりとて当面の不安をいかに処理し安心を得てしっかりした経営を確立するか、苦慮されている経営者も多いことかと思います。
そこで当事務所ではそんな不安を一緒になって考え、今できる対策を熟慮し、できることから実行していきたいと思っております。

国際税務の窓6

中小企業において昨今外国の技術を導入し製造することもめずらしくありません。
契約は細心の注意を払い法律の専門家の意見を聞き、見落としや不利な点がないか検討していることと思います。
しかし、送金時の源泉徴収について安易な判断をしている場合が少なくありません。
市場調査の行われている場所がインドなので、調査費の支払には源泉徴収する必要がないとして外国へ送金している場合が多いものです。

インドの法人に市場調査費を払うにあたり源泉徴収しないで支払っていた。

国際課税において「債務者主義」という言葉があります。
インドでM&Aを計画している日本法人が市場調査をインドの現地法人に調査を依頼した場合、市場調査の仕事がインドで行われた場合、日本の税法は源泉徴収を要しないと規定ています。

しかし、租税条約において相手国と債務者主義を採用している場合があります。債務者主義とはインドとの租税条約において市場調査費を払う場合支払者の所在する国(日本)で、その所得が発生したと考えるのです(債務者主義)。
インド国との租税条約では支払者が源泉徴収する義務が課されています。
(国ごとに規定が異なりますのでご注意下さい。)

花の写真

*源泉徴収は20%ですが、条約で10%の減免があります。
支払う前に税務署に届出書を提出します。

国際税務の窓5

国際課税問題を考慮する場合租税条約は重要な要素です。
現在多くの国と締結している租税条約はほぼ各国の条項はかなり類似しています。
典型的な租税条約として米国との条約が基本になります。
その基本から取引相手国との条約を検討して対応を考慮したらいかがでしょうか。

日本法人において単なるうっかりした誤りとして源泉税を控除しないで対価を国外の法人に支払うケースがあり、調査時に指摘されています。
ドイツの法人に特許料を払うにあたり源泉徴収しないで支払っていた。

米国法人にコンピューターのソフト使用料を支払うにあたり源泉徴収しないで支払っていた。

香港法人から借入し利息を払うにあたり源泉徴収しないで支払っていた

*租税条約の締結により適用税率が異なってきます。
現在香港との間で平成22年11月9日条約の署名が行われ効力発生を待つ状態となっています。
24年の1月から源泉税の取り扱いが新条約の適用となると思われます。
このように日々新しく適用となる条約にも注意が必要と言えます。

協定は平成23年8月14日に発行しました。
源泉徴収の規定は平成24年1月1日から適用されます。

ご不明な点は税理士にご相談ください。

国際税務の窓4

前回は台湾を舞台にした収入除外の実例でしたが、
今回も台湾を舞台にしています。

台湾からの収入除外が生じる理由を考慮してみましたが憶測を含め台湾は個人を基本にした取引の考え方が主流のように思われます。

会社は独立した法人というより個人の所有との考えが基本にあるようで、お世話になった個人への感謝を表す結果が収入除外に繋がりやすい現実を生むことになるように思われます。

社長は温厚な方でしたが、妻の交際の広いことから経費が尋常でなかったこと。
副社長は叔父であるが、経営上軋轢があること。
から除外したことを認めました。

*台湾と日本では租税条約の取り決めは無く情報交換が機能していません。
しかし、安心感は適正申告から生まれると思います。

国際税務の窓3

国税の実務において実際の出来事は
単純である一面、また奥が深いと感じることもあります。
社長さんが脱税をしていたことも事実であり,
脱税が発見された時の社長さんの反応も記憶に残ります。

日本法人は台湾に製造子会社を有し精密小型機器を製造。
社長は技術供与とノウハウを台湾人経営法人に提供。
対価4500万円を日本の銀行・上野支店・社長の母名義に入金。

簿外口座の振込人は東証一部上場会社の75歳会長でした。
台湾実業家:陳から頼まれ4500万振込。
現金を上野支店に持参し口座に入金していました。
何故持参したのかと尋ねたところ振り込むと手数料が掛かるとの回答でした。

脱税した社長は、一部上場会社会長・及び陳氏について全く面識がないとの回答でした。

社長は、母名義口座の入金は台湾からのもので技術供与の対価と認めました。
金額は台湾現地法人が台湾経営法人に売却する半製品に率を掛けたものであるとの回答から。
台湾現地法人から書類を取り寄せ計算したところ
簿外金額と一致しました。
社長は私に「何故わかったのか。」と尋ねました。
私は無言でした。

国際税務の窓2

今では海外取引を日常業務とする会社にとって「移転価格」という言葉は解説のいらない用語になっていますが、日本の税制が規定したのは昭和61年でした。当初どのような調査が行われ、どのような課税になるのか、課税を受ける会社のみならず国税当局も、模索の時代を歩んだと想像できます。

上記A・B図において日本の税務当局が正当な海外子会社への販売価格は130と主張し課税の更正処理をすることで、移転価格課税の執行が行われたことになります。
日本親法人利益・A図・・・40
日本親法人利益・B図・・・70

税務当局の正当価格が130という根拠は何か?
正当な処理とした場合米国で課税されていることから生ずる二重課税部分は法人として泣き寝入りとなるのか。
会社が130の売上価格が正当であるとどのように説明するのか。

一般的に課税価格が大きいことから会社にとって大きな問題です。

過去に以下のような報道がありました。

更正年月法人名金額
11年京セラ50億円
09年アマゾン140億円
08年信越化学233億円
06年ソニー744億円
06年武田製薬1223億円
国際税務の窓1

海外子会社からの受取配当金は益金とならず税金が課税されないことになりました。

従前は日本親会社に持ってくると課税対象となり日本の実行税率が高いことからなかなか配当しないできた経過があります。

日本親法人が研究開発を促進し世界経済に競争するうえでこの税法改正を機に資金の活用を熟慮すべき時と考えます。

細部の説明は省略しています。
適用に当たっては税理士にご相談ください。